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TreeFrog Therapeutics Japan株式会社

TreeFrog Therapeutics Japan株式会社

神戸医療産業都市から、
必要とする全ての人々に細胞治療を届ける

2023.08.23

TreeFrog Therapeutics Japan株式会社代表取締役社長ファビアン・ドゥバケール 氏

ポートアイランド(第2期)

iPS細胞をはじめとした多能性幹細胞由来の細胞治療を開発しているフランス発のバイオテクノロジー企業「TreeFrog Therapeutics」。その日本法人である「TreeFrog Therapeutics Japan」が、神戸医療産業都市に新たな事業拠点を開設しました。同取締役社長のファビアン・ドゥバケール氏に、神戸進出の目的や今後の展望などについて聞きました。

2023年3月、神戸ラボを訪問したマキシム・フェユ氏(写真中央、TreeFrog Therapeutics共同創設者兼CSO)、
フランソワ・ルノー= 三原氏(写真左、リードサイエンティストジャパン)、滝山惇氏(写真右、日本事業開発担当)

細胞治療をもっと普及させるために

TreeFrog Therapeuticsは、生物物理学者と細胞生物学者が設立したフランス・ボルドーに拠点を置くバイオテクノロジー企業です。「安全で効果的、かつ手頃な価格の細胞治療を多くの患者さんに届けたい」という夢を持ち、2018年に創業しました。
Tree-Frogは日本語に直訳すると「アマガエル」となりますが、ユニークなネーミングにはいくつかの由来があります。一つは、手足を再生できるカエルがヨーロッパで「再生」を象徴する生き物であり、当社が事業の根幹とする再生医療に通づること。また、フランスの一部の地域ではカエルを食べる文化があり、その人たちのことをイギリス人などが冗談めかしてフロッギーズと呼ぶこと。もう一つは、当社が活用しているマイクロ流体システムが木の幹の部分に似ていること。こうした意味やイメージを持つ言葉を組み合わせ、スタートアップならではの遊び心が感じられる社名が生まれました。

画期的な独自技術で世界をリードする

TreeFrog Therapeuticsでは独自開発した「C-Stem™」という技術を保有しています。これは細胞をカプセル化する技術であり、培養する細胞の高い生存率や多能性を維持することができます。また、そのカプセルにiPS細胞などの人工多能性幹細胞を封入して増殖させることで、細胞治療薬などに用いる高品質な細胞の大量培養を可能としました。さらには、大量培養した細胞を心筋細胞や神経細胞など目的とする細胞にカプセル内で変化させ、そのまますぐに人へ移植することもできます。
TreeFrog Therapeuticsの日本法人として2022年2月に誕生したTreeFrog Therapeutics Japanでは「C-Stem™」を活用し、iPS細胞をはじめとした多能性幹細胞を用いた細胞治療のパイプライン開発を、国内企業との連携を通し進めています。

神戸医療産業都市に事業の可能性を感じて

TreeFrog Therapeutics Japanは立ち上げ時に東京オフィスと併せて神戸医療産都市にラボを開設しました。山中伸弥氏がiPS細胞の開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した日本は、再生医療におけるパイオニア。その日本に拠点を置くことは、私たちにとって最も重要なミッションの一つでした。
ラボ設立の候補地がいくつかあった中で、神戸に決めた最大の理由は神戸医療産業都市の存在です。世界有数の研究機関やアカデミア、最先端医療を推進する病院などが集積し、日本最大級のバイオメディカルクラスターを形成している地に私たちもラボを設置することができれば、そのリソースを活用した幅広い事業展開が見込めます。
加えて、神戸は世界に名の知られた国際都市であり、近くに空港や新幹線の駅が整備されて交通アクセスも良く、人々の生活の質が高いエリアであることにも魅力を感じました。

神戸ラボの恵まれた環境に大満足

神戸ラボを開設するにあたっては、神戸市と兵庫県の手厚いサポートを受けました。そのおかげで、日本屈指のライフサイエンス系研究開発拠点である「クリエイティブラボ神戸(CLIK)」にフランスのバイオテクノロジー企業として初めて入居することができ、本当にうれしく思っています。
最新鋭の研究機器が整備されたCLIKは、研究者にとって申し分のない環境です。私が施設見学に訪れたときは、まだ入居者がいなかったのですが、今では個性あふれるインキュベーターたちがどんどん集まり、活気が生まれています。施設内には、2018年のノーベル生理学・医学賞受賞者である本庶佑博士が理事長を務める公益財団法人神戸医療産業都市推進機構の「次世代医療開発センター」も開設されており、同じ場所に私たちのラボが開設できたことを誇りに思っています。
神戸ラボでは現在、日本の企業との実証実験を進行中で、その成果を今後のビジネスへ発展させることに注力しています。また一方で、新しいプロジェクトの立ち上げも検討しているところです。医療関連ビジネスは、事業の大枠を決定したり正式な契約に結びつけたりするまでにかなりの時間を必要としますが、一歩ずつ着実に前進できるよう努力を重ねたいです。

外国企業の進出を後押しする支援制度

神戸市は私たちにいつも包括的なサポートを提供してくれています。なかでも、オフィス賃料や雇用加算にかかる補助金制度は当社にとって何よりありがたく、今後、神戸で事業を拡大していく中でぜひとも活用したいと考えています。
その他にも、進出に伴う申請書類等の作成を手助けしてくれるなど、外国企業のスムーズな活動に配慮したきめ細やかで多様な支援が充実していることに驚きました。これは日本のシステムが理解できていない外国企業にとって非常に心強く、神戸進出のステップを楽にしてくれる大きな要素だと思います。
神戸市の現状のサポートやビジネス環境には心から満足していますが、もし一つ要望を加えるとすれば、採用活動でも力を貸していただけると嬉しいですね。これから神戸で事業を拡大していくためには、優秀な人材の確保がカギを握っています。神戸や神戸医療産業都市に拠点があるというだけで、すでに人材採用に有利な立場にあると思っていますが、さらに神戸市のバックアップが得られればありがたいです。
神戸市では2023年度からヨーロッパ企業の誘致に特化した事務所をパリに開設し、現地での誘致活動に取り組んでいると聞きました。私たちにできることがあれば何でも協力しますので、ビジネス拠点としての神戸の魅力をもっとヨーロッパへ発信していきましょう。

2022年3月、神戸ラボ設立時。
写真左から大前幸司氏(神戸市)、フランソワ・ルノー=三原氏(TreeFrog Therapeutics Japan、リー ドサイエンティストジャパン)、
川真田伸先生(細胞療法研究開発センターセンター長(当時))、ファビアン・ドゥバケール氏 (TreeFrog Therapeutics Japan、代表取締役)、
垣内正雄氏(神戸市)
TreeFrog Therapeutics Japan株式会社

TreeFrog Therapeutics Japan株式会社

本社設立 2018年
事業内容 幹細胞由来細胞治療法の開発
所在地
〒650-0047 神戸市中央区港島南町6丁目3番7クリエイティブラボ神戸

URL https://treefrog.fr/jp/

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