神戸を宇宙産業の新たな集積地に。
人工衛星事業で世界に挑む
2026.02.10
株式会社ニッシン代表取締役 CEO竹内 新 氏
2024年に株式会社ニッシンが新設した神戸事務所は、産業用電子機器メーカーとして培ってきたモノづくりの知見を未来につなぐ拠点です。再整備が進む六甲アイランドに位置し、「宇宙」をキーワードとした新事業の基盤づくりに取り組んでいます。神戸に進出した背景と新たなステージで描くビジョンについて、代表取締役の竹内 新氏にうかがいました。

宇宙への第一歩は長田の町工場から
当社は1945年、私の祖父が大手電機メーカーの支援を受け、協力会社として創業しました。以来、電子機器の受託開発・製造・販売を一貫して手がけています。その一方で、自社ブランド製品の確立にも継続的に取り組み、国産マイコンの開発に挑戦した時期もありました。近年は産業用・工業用の電源装置を主力に、半導体やチップを製造する設備向けの電源にも注力しています。さらには、交通インフラ、宇宙、情報セキュリティなど、幅広い分野に向けて技術や機器を提供しています。
本社は現在、宝塚市にありますが、創業の地は神戸市長田区で、当時は従業員5人の小さな工場でした。このたび、当社のルーツである神戸に新しく事務所を開設することができ、大変うれしく思っています。
神戸事務所は宇宙に関わる事業を主軸としており、人工衛星向けの電源やバッテリーの開発・製造・販売をミッションに掲げています。日本では近年、たくさんの宇宙ベンチャーが登場し、衛星通信サービスや人工流れ星の開発、宇宙ゴミの回収事業など、多様なアイデアやアプリケーションが次々と生まれています。けれども、これらを支える人工衛星やロケットといったハードウェアの供給はまだ十分とは言えず、安定的に製造できる担い手も限られているのが現状です。そこで私たちは、2009年からコツコツと積み上げてきた宇宙関連事業を拡張し、宇宙産業の発展や社会に貢献することを目指して神戸事務所を立ち上げました。

六甲エリアのポテンシャルに着眼
神戸事務所は六甲アイランドに建つ神戸ファッションマート内に設けました。かつて当社の子会社も同じ施設にオフィスを構えていたことがあり、私たちにとっては馴染み深い場所です。施設の建築デザインには宇宙を想起させる要素があり、私たちの事業との親和性を感じます。
六甲アイランドを拠点に選んだことは正解でした。バブル崩壊後は人が減り、まちの勢いも失われたと思っていましたが、訪れてみるとその認識は大きく覆されました。まち並みや施設は美しく整備され、家族連れが行き交い、今まさに次の成長期に差しかかっているかのようなダイナミズムを実感したのです。今後は人々の往来がさらに活発化し、落ち着いたビジネスエリアへと成熟する可能性を秘めています。その中で神戸ファッションマートの存在感はますます高まっていくでしょう。アパレルを中心とした施設というイメージは根強いものの、当社のような異業種の参入も見られます。将来的には多種多様な企業がモザイクのように混ざり合い、神戸ファッションマートの新たな魅力が形成されることを期待したいですね。
関西には尼崎や東大阪といったモノづくりの集積地もありますが、私は断然“神戸推し”。神戸市では「オフィス賃料等補助制度」などの支援制度が充実しているだけでなく、都市の洗練された美しさや快適性、にぎわいがバランスよく備わっており、ビジネス環境として申し分ありません。東京や鹿児島に次ぐ宇宙産業の拠点を近畿圏で考えるなら、神戸は適地の一つではないでしょうか。宇宙産業を育て、集積させていくための素地は十分にあると見込んでいます。

失敗を恐れない社内文化を醸成
新事務所の開設に伴い、今後は神戸市内での採用活動を積極的に進めていく予定です。兵庫県のほぼ中央に位置する神戸は交通アクセスが良く、淡路島や近隣市からも人材を呼び込めると思います。人材採用で重視したいのは、専門知識や高度な技術力よりも人間力の高さ。加えて、枠にとらわれることなく「この仕事がしたい」という強い意志を持っているかという点です。実際に社内の若いエンジニアの中にも、電気回路や設備設計に携わりながら「将来は人工筋肉の開発に挑戦したい」と言い続けている者がいます。こうした個々の情熱がなければ、組織として新しい分野へ踏み出すことは難しい。自分自身の夢や目標を明確に持ち、それに向かってアクションを起こせる人に仲間になってほしいのです。
当社には失敗を前向きに評価する文化があります。結果より行動を起こした事実こそが大事。その姿勢を象徴するスローガンが「What shall I do!」です。技術を生業とする企業にとって、失敗は成長の糧。100回の挑戦のうち1回でも成果につながれば十分で、成功に安住すれば新しい技術が出てきた途端に追い抜かれてしまいます。だからこそ、常に考え、挑戦し続け、失敗を恐れずに行動する。その積み重ねこそが会社を成長させる原動力だと考えています。

「神戸ブランド」を味方に海外へ
ありがたいことに神戸事務所の立ち上げ当初から多くのお引き合いをいただき、営業活動やプロモーション活動にまで手が回らない状況が続いています。とはいえ現状に甘んじることなく、新たな分野へのチャレンジも検討しています。なかでも注目しているのはヘルスケア分野です。当社の強みである電子機器技術とヘルスケアを掛け合わせた領域には大きな可能性を感じています。
また、宇宙関連事業については海外展開も視野に入れています。海外へ進出するにあたっては神戸のブランド力を追い風にしながら、まちの魅力は神戸牛だけじゃない、モノづくりの力もすばらしいのだということを広く世界に発信していきたいですね。

