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日本イーライリリー

日本イーライリリー

革新的医薬品に思いやりを込めて:
神戸市との連携で社会問題に取り組む

2025.02.12

日本イーライリリー代表取締役社長シモーネ・トムセン 氏

磯上(オフィス)

日本イーライリリーは、米国に本社を置くグローバル製薬企業の日本支社として、1975年に神戸で設立されました。 現在、糖尿病、がん、自己免疫疾患、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患に焦点を当てた医薬品の研究開発に取り組んでおり、地域コミュニティ支援にも力を注いでいます。同社の使命は、日本の患者さんのより豊かな人生のため革新的な医薬品を開発し提供することです。

現在、日本イーライリリーは神戸市と協力し、社会問題に直面するコミュニティを支援するいくつかのプロジェクトを推進しています。今回はそのプロジェクトや神戸で事業を展開する利点などについて、代表取締役社長であるシモーネ・トムセン氏にインタビューしました。トムセン氏は、産官+民のパートナーシップがあるからこそ、多くのことを成し遂げることができると述べています。

神戸市との連携について詳しく教えてください。

「認知症の人にやさしいまち」の実現にむけた連携とヤングケアラープロジェクト

本日は日本イーライリリーが神戸市と連携している2つのプロジェクトについてお話します。1つは「認知症の人にやさしいまち」の推進に向けたプロジェクト、もう1つはヤングケアラープロジェクトです。

私たちはグローバルで35年以上にわたり認知症の研究に取り組んでおり、特にアルツハイマー病の治療薬の開発に力を入れ、アンメットニーズ(未解決の医療ニーズ)に応えるために尽力しています。

そこで、2016年に神戸市が「認知症の人にやさしいまちづくり」の推進を決めた際、日本イーライリリーが持つ専門知識を活かして神戸市の取り組みの実現に貢献したいと考え、同年に神戸市とパートナーシップを結びました。私たちの目標は、認知症の当事者とその家族のための持続可能な医療支援システムの構築です。まずは、神戸市と共同で認知症に関する市民への啓発活動から始め、臨床試験の推進や理解促進に向けた取り組みを行っています。

神戸市では、2019年に早期受診を支援する「認知症診断助成制度」と、認知症の方が事故を起こした場合に救済する「認知症事故救済制度」からなる「神戸モデル」を立ち上げました。これまで約8万人の神戸市民が認知機能検査を受けていると聞いています。

また、2024年に米国研究製薬工業協会と日本イーライリリーが東京で共催した「ヘルスケア・イノベーションフォーラム」では、神戸市の久元市長から「神戸モデル」をご紹介いただきました。「神戸モデル」のような包括的な取り組みは世界的に見てもユニークであり先進的です。私たちは「神戸モデル」が日本全体に広がることを期待しつつ、今後も神戸市との協力関係を維持し「認知症のひとにやさしいまちづくり」の実現に向けて協力していきたいと考えています。

ヤングケアラープロジェクトについて教えてください。

産官+民が協力して、認知啓発と子どもらしい時間の提供へ

約3年前、ヤングケアラー支援に取り組んでいる大阪のNPOを通じて、ヤングケアラーに関する社会問題を知りました。日本では約40万人(学校のクラスに1人または2人)がヤングケアラーで、子どもらしい生活を送ることができていないこともあると聞き、これは非常に深刻な問題であり、ヤングケアラーを支援する活動の必要性を感じました。

まずは、ヤングケアラーの社内での認知度の向上に取り組み、2023年からは社会に対してもその活動を広げるべく、児童館や子ども食堂などへの図書寄贈活動を始めました。神戸市にも助言をいただきながら、神戸市内の施設を中心にヤングケアラーに関する図書寄贈を行い、最終的にはこの取り組みを日本全国に拡大しました。ヤングケアラーたちは様々なストレスを抱えている可能性もあるため、少しでも子どもらしく過ごす時間を提供したいと考えたのです。

2024年には、ヤングケアラーに対する社会認識を高めるための映画イベントを開催し、近隣企業にも声をかけました。その結果、企業17社より120人以上の参加があり、より多くの企業やそこで働く社員の皆さんが関心を向ける機会となりました。

このような広範な民間セクターの協力は非常に素晴らしく、改めてヤングケアラーを取り巻く地域や社会の問題の大きさを浮き彫りにしました。私たちは、神戸市が本課題に真摯に取り組んでおられることを心強く感じており、当社のネットワークを活用して神戸市と協働することで、さらに大きな取り組みにしたいと考えています。

ヤングケアラープロジェクトは始まったばかりですが、着実に進展しており、産官+民が共通のビジョンに向かって協力して多くの事柄を成し遂げられることを嬉しく思います。

神戸で特にお気に入りの場所や過ごし方はありますか?

神戸の自然、サッカー、パン屋がお気に入り

私はワークライフバランスを大切にしており、定期的に住吉川沿いを走ってリフレッシュしています。また、私たち家族はアウトドア派なので、須磨海岸に新しくできたエリアや六甲山にもよく行きます。

三ノ宮のショッピングエリアにもよく出かけます。大都市とは違い、リラックスして買い物ができる雰囲気が好きです。リニューアルした東遊園地もお気に入りで、友人と集う定番のスポットです。

もう一つ神戸で気に入っているのは、おいしいパン屋がたくさんあることです。ドイツ出身の私たちにとって、おいしいパン屋との出会いが暮らしを豊かにしてくれています。また、熱心なサッカーファンでもあるので、ヴィッセル神戸の試合を観戦するのも楽しみです。特に最近のヴィッセル神戸は調子がいいので、応援にさらに熱が入ってしまうんですよ。

将来、神戸に進出を計画している企業へのアドバイスはありますか?

利便性、快適さ、国際的な魅力がバランスよく備わったまち、神戸

日本は働きやすく住みやすい国だと思いますが、その中でも神戸は特に働きやすく住みやすい地域だと感じています。

古くから神戸は日本の玄関口としての役割を果たし、特にヨーロッパ諸国にとって大事な日本への入り口でした。その影響からか、神戸の街や文化にはかなりヨーロッパ的な雰囲気が感じられます。また、神戸の多くの人々は外国人に対してオープンマインドで、親しみやすいですね。

こうした国際的な要素は、外国人が住むために非常に重要です。個人的には、神戸は日本国内で最も住みやすく働きやすい場所だと思っています。利便性、快適さ、国際的な魅力が全てバランスよく備わっており、居住地として理想的です。関西には優秀な働き手も多く、日本の中心に位置する恵まれた立地によって国内の主要都市へのアクセスも容易です。

また、海外から家族で日本に移住する場合、質の高い教育を提供するインターナショナルスクールへのアクセスは重要な考慮事項です。神戸には複数の選択肢があり、この点でも私たちのような家族にとって特に魅力的な都市となっています。さらに、神戸市役所の皆さんの柔軟な考え方と、産官学の強力なシナジーが相まって、コラボレーションとイノベーションのための活気ある環境が生まれています。神戸は多様なニーズと機会に応える包括的なパッケージを提供しています。

最後に、今後のビジョンを教えてください。

多様でインクルーシブな職場環境と健康的なワークライフバランスの促進を通して、患者さん、ご家族、地域の方々のより豊かな人生に貢献

私たちは、2つの主要なイニシアチブに焦点を当てています。1つ目は、多様でインクルーシブな職場を醸成し、すべての人が価値を感じ、必要なサポートを受けられる環境をつくることです。また、LGBTQの権利、同性婚、障害、ジェンダーの多様性などの課題にも取り組んでおり、神戸市や兵庫県、他企業との協力で、すでに前向きな感触もあります。2つ目のイニシアチブは、当社の従業員だけでなく、市の職員や神戸全体のコミュニティに対しても、健康的なワークライフバランスを促進することです。神戸がさまざまな人にとって、さらに働きやすく住みやすいまちになることにも貢献し続けたいと思います。
日本イーライリリーはこうしたイニシアチブを通して、我々を待つ患者さんやご家族、そして神戸をはじめとした地域の皆様のより豊かな人生に貢献できるよう、事業活動を加速してまいります。

日本イーライリリー株式会社

設立 1975年11月1日
所在地
■本社/兵庫県神戸市

URL https://www.lilly.com/jp

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