2013年に税理士事務所としてスタートしたアンテリジャンス・グループは、障がい福祉事業者のバックオフィスや倒産させないためのコンサルティングなどを行う士業グループです。全国で1000社以上の相談実績を持ち、近年急成長を続けています。

2023年春に神戸オフィスを新設し、ますます勢いに乗る鳴海佑亮代表に事業の現状と展望などについて聞きました。

日本で唯一無二の士業サービスを展開

当社は日本で唯一の障がい福祉に特化した士業グループです。士業とは、税理士や行政書士、公認会計士など高度専門国家資格者を持った職業の通称です。当グループには税理士法人を筆頭に社会保険労務士事務所と行政書士事務所があり、現在約50名のスタッフが所属しています。このたび開設した神戸オフィスは、大阪本社、東京拠点、横浜拠点に次ぐ事業基盤で、今秋には博多にもオフィスを設置する予定です

当社の最大の強みは、障がい福祉事業所の設立から運営までをワンストップでサポートし、バックオフィス業務を一括代行できることです。障がい福祉事業を起業すると50項目にも及ぶ法律業務が必須となるのですが、事業者の方の多くはこうした業務に対応する知識がありません。そこで我々が代わって業務をカバーし、事業の成長を支えています。
また、「絶対に事業所を倒産させない」というミッションを掲げ、サービスを提供しています。障がい福祉事業所は利用者の居場所や心の拠り所になる存在。失われることがないよう、事業計画シミュレーションツールを使って売上や利益などを予測し、先を見通した提案を行っています。手厚いサポートを信条としながらも料金は一般的な相場に設定し、創業以来お客様に寄り添う姿勢を貫いてきました。

障がい福祉に振り切った３つの理由

当社が完全に障がい福祉サービスに専門特化したのは2020年からですが、それには理由があります。

１つは他社との差別化です。私は一般社団法人やNPO法人などの特殊な法人格を扱う会計事務所で修行し、その分野の税務・会計業務に長けていました。独立後はこのスキルを生かし営業活動に試行錯誤する中、一般社団法人で障がい福祉事業を行っているお客様との出会いをきっかけに、障がい福祉サービスには就労会計という特殊で複雑な会計基準があることを知りました。よく調べてみると、障がい福祉分野を専門とする税理士が全国に１人もいなかったのです。これはニーズがあるかもしれないと思い、就労会計に対応可能とホームページで打ち出したところ、電話が鳴るようになりました。

また、障がい福祉事業所を運営するお客様から「事業所は利用者とその家族の人生を支えるかけがえのない存在である」と教えられたことも、この分野に特化した動機の一つです。我々が事業所を倒産させないことで社会に貢献できるなら、ぜひその役割を果たしたいという熱意が芽生えました。

そして何より、市場に可能性を見出したことが障がい福祉へと完全に舵を切った最大の理由です。現在、日本に障がい者は約1160万人おり、障がい福祉施設は約13万5000ヵ所あるのですが、ニーズに対して施設の数がまだまだ足りておらず、成長産業であることは明白です。けれども、障がい福祉に専門特化した税理士事務所が日本には存在しなかったことから、当社がパイオニアになろうと決意しました。

事業拡大の地に最適だった神戸

士業が関与できる障がい福祉施設は、現在国内におおよそ２万7000法人あります。事業拡大を狙うには、それらが多数所在する都道府県に拠点を置くのが合理的という持論から、オフィスの場所を選定してきました。兵庫県は全国６番目の施設数を有し、中心都市の神戸は私の故郷。ブランド力があり、大阪本社から近く、交通の便も優れています。それに加え、神戸医療産業都市の発展により医療福祉ビジネスが展開しやすいだろうという期待感も膨らみ、進出を決めました。

神戸市の手厚い補助金制度については後から知り、思わぬ恩恵に大喜びしました。オフィス賃料や雇用に対する補助制度をありがたく活用させてもらっています。

また、神戸には人材の可能性も感じています。税理士事務所は全国に３万件ほどありますが、トップ500に入る大手事務所は兵庫県内に11件しかなく、大手が獲得できていない優秀な人材が豊富に眠っていると思うのです。今は、税理士事務所で２～３年の実務経験がある人をはじめ、福祉業界の経験者、福祉関連の有資格者、営業職や広報のスペシャリスト、システムエンジニアを募集しています。将来性のある人材を神戸でどんどん発掘していきたいですね。

メタバースを活用した新規事業に着手

最近は士業の枠を超えた事業にも挑戦しようと、メタバース（インターネット上の仮想空間）に福祉都市を創造するプロジェクトを進行中です。そこに市場を形成して企業の参入を募り、障がい者雇用を生み出したいのです。いずれは障がい者の起業家も輩出できればと夢を広げています。近年は障がい者の活躍できる場が求められていますが、現実社会では困難も多いのが実情です。けれどもメタバースの世界では、身体的や精神的な障壁にとらわれず、自由な活動ができます。本プロジェクトを成功させ、障がい者の未来を拓くことが我々の目標です。

その実現に向けた一歩として、社内でメタバースの運用を開始しました。拠点間の会議や情報共有などコミュニケーションツールとして活用していますが、業務の円滑化に大変役立っています。

神戸はまだまだ市場開拓の余地があり、可能性に満ちた魅力のある街。多数の有力企業が進出し、地域がより活性化することを願っています。