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エム・シーシー食品株式会社

エム・シーシー食品株式会社

飽くなき味への追求。
神戸から「世界に愛されるブランド」を目指す

2022.11.28

エム・シーシー食品株式会社常務取締役 営業本部長水垣 佳彦 氏

ポートアイランド(第2期)

1923年の創業以来、神戸を基盤に事業を展開するエム・シーシー食品株式会社は、業務用・家庭用の調理缶詰・レトルト食品・冷凍食品を製造販売する調理食品メーカーです。自社ブランドだけでなく、学校給食や生協用商品、大手企業のOEM商品などを数多く手がけ、「ほんものの味」を追求したカレーやスープ、クリームコロッケなどが広く人々に愛されています。自社工場はすべて神戸市内にあり、2022年1月には4ヵ所目となるポートアイランド工場を新設。その経緯や思いを常務取締役・営業本部長の水垣佳彦氏に聞きました。

水垣 佳彦 氏

機械任せにはできない「調理」へのこだわり

自社工場の中で最大の広さとなるポートアイランド工場は、最新鋭の設備を導入し、可能な限り自動化や省力化を図りました。けれども、味の根幹となる工程は従来の方法を貫き、調理師免許を持った社員が手間と時間をかけて“調理”をしています。製造は基本的にフローシートに沿って進行しますが、例えば、油を加熱してニンニクを投入するという場面では、ニンニクの産地や収穫時期によって水分量が異なり、まるっきりプロセス通りというわけにはいきません。新鮮なニンニクを擦りおろし、鍋で炒め、湯気が落ち着いたら水分がなくなった目安。次にタマネギを加える、といったレストランの厨房で行われている手順にならい、釜場担当者が食材と調味料を加える順番や火入れのタイミングを判断しています。今の技術なら機械に任せることも可能かもしれませんが、当社の味は人の五感や経験がなければ成立しないと考えています。

新工場は清潔度レベルに優先順位をつけてゾーニングするなど、衛生管理も徹底しています。併せて、作業空間の暑さ・寒さ対策など、職場環境の快適性にも注力しました。特に女性スタッフから改善の声が寄せられたトイレは、「ホテル仕様にしてほしい」との要望に応え、社員食堂の次に眺望が良く、スタイリッシュに仕上がっています。

事務厚生エリア(トイレ・食堂・更衣室)

新工場建設地は交通の便と土地への信頼が決め手

新工場の建設候補地は、取引先の多い関東方面も挙がりました。けれども最終的に神戸に決めた背景には、社長の思いがあります。一般的に食品工場の立地場所は、原料産地に近い生産地立地か、消費地や販売先に近い消費者立地のいずれかを基準に選定します。その視点から見ると、当社にとって神戸はどちらにも当てはまらず、土地代や人件費も高い。それでも創業時から神戸に拠点を置く理由は、当社が扱う洋食の文化を古くから発信してきたまちに敬意を払い、“文化地立地”を重視したいという社長の強い意向があるからです。

最終的には実施しませんでしたが、計画段階では既存工場の集約も選択肢の一つとしていたため、スタッフの通勤圏内であることも条件の一つでした。その点でポートアイランドは申し分なく、工場団地でありながら駅が近いことは大きな魅力でした。また、ハザードマップで確認すると安全性が高く、最先端の研究機関や医療施設が集積しているという地域特性も土地への信頼につながり、決め手となりました。

ポートアイランド工場

祖業である業務用商品への揺るぎない思い

創業からおおよそ100年に及ぶ長い歴史の中では、軍需で成長した時代があります。創業者は第二次世界大戦時、日本軍が進駐した地に工場を建て、捕った魚で作った大和煮を兵隊に提供し、勢い良く事業を拡大していきました。しかし、終戦と同時に失速し、残ったのは借金だけ。この苦い経験から創業者が唱えた、平時も戦時もバランスの取れた経営を行う「和戦両面」の教えが今も私たちに息づいています。

この言葉が生きたのがコロナ禍です。コロナ前の販売比率は業務用商品6:家庭用商品4でしたが、コロナの影響で5:5になりました。図らずも、以前から目指していたバランスが整ったことから、これを機と捉えて家庭用の販路拡大に力を注いでいます。

とは言え、軸足は祖業の業務用にあることに変わりはありません。当社は業務用をお客様に高く評価していただいたことを弾みに、「プロが認めた味」として家庭用に進出しました。たとえ今後、家庭用の販売が増大しても、業務用を疎かにすることはありません。

今は業務用商品の選択・購入の決定権を、料理人ではなく、料理経験のない立場の人が握る時代。となると、どうしても知名度の高い競合大手に分があります。今後は家庭用で認知度とブランドイメージを高め、業務用の販売促進につなげることが課題です。

新工場設立で生まれた神戸市へとの結束

新工場は稼働を始めたばかりですが、さっそく新たな事業の芽が生まれつつあります。先日は神戸医療産業都市推進機構にご紹介いただいた医療機関から、患者さんの食事提供についてご相談がありました。今までご縁がなかった医療分野にも展開の道筋が見えたのは、ポートアイランドに進出したからこそだと思います。

また神戸市には、税制の優遇や補助金の支援など手厚くサポートしていただきました。さまざまな部署の方々から情報を得たり、連携して活動したりする機会も生まれています。地元でより愛されるブランドに成長するため、地域活動に注力したい当社としては、こうした神戸市のお力添えは大変ありがたいこと。いつも職員の皆さんがいきいきと仕事に励んでおられる姿が印象的で、私たちも刺激を受けています。

当社は原材料にもこだわり、県内の農家と提携して、カレーなどで使う淡路産タマネギや、ジェノベーゼソース用のバジルの栽培・加工に取り組んできました。今後も兵庫県産の原材料を増やしていきたい気持ちは強く、いずれは神戸市産へも展開を広げることにより、地域に新たな経済効果が生まれるのではと夢を膨らませています。

これからも神戸と共に歩み、世界に愛される味を目指して邁進したいと思います。

エム・シーシー食品株式会社の方々と神戸市担当職員
エム・シーシー食品株式会社

エム・シーシー食品株式会社

設立 1954年1月
所在地
■本社/〒658-0023 神戸市東灘区深江浜町32番
■東京支店/〒108-0075 東京都港区港南2丁目12番23号 明産高浜ビル6F

URL http://www.mccfoods.co.jp/

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