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「協働ロボットとDX+AIで作る製造業の未来」@神戸市立工業高等専門学校

「協働ロボットとDX+AIで作る製造業の未来」@神戸市立工業高等専門学校

iCOM技研株式会社 山口知彦代表取締役による特別講義を開催

2024.07.23

2024年7月8日、iCOM技研株式会社 代表取締役の山口知彦さんが神戸市立工業高等専門学校(以下、「神戸高専」)で特別講義を行いました。
iCOM技研株式会社(以下、「iCOM技研」)は、製造現場で人間と協調しながら作業をする協働ロボット事業に力を注ぎ、人手不足の解消や生産性の向上に取り組んでいます。
今回の特別講義のテーマは「協働ロボットとDX+AIで作る製造業の未来」。山口さんは次世代の高度情報化社会の発展を支える電子工学科4年生に向けて熱心に語りかけました。

ーー 協働ロボットのリーディングカンパニー

講義はまず、iCOM技研の紹介から始まりました。

iCOM技研は山口さんが個人事業として2003年に立ち上げ、制御設計、装置・ロボット製作を中心に事業を展開していました。

転機が訪れたのは2016年。当時はまだ日本でほとんど知られていなかった協働ロボットの将来性に、いち早く着目し、ロボットシステムインテグレータ事業を始めます。

その後は産学・産官連携の共同研究にも取り組み、2024年春には小野市の本社に加え、神戸・元町にソフトウェア開発・ロボット教育拠点を新設。ハードウェアとソフトウェアの技術力を融合させ、製造業界が抱える課題の解決に挑んでいます。

ーー ロボットシステムインテグレータってどんな仕事?

ロボットシステムインテグレータは、まだ世間の認知度が低く、学生たちも仕事内容が想像できない様子。そこで山口さんは、次のように説明しました。

「自社でロボットのハードウェア開発は行わず、メーカーから部品を集めて組み合わせ、ソフトウェアを追加し、ロボットシステムを構築していく仕事。ハードウェアとソフトウェアの両方の知識が求められる分野であり、皆さんが日ごろ勉強している内容に近い」

この言葉に学生たちの関心が集まり、真剣な表情で講義に耳を傾けます。

ーー 大きく進化しているロボットシステム

ロボットシステムは今、躍進期を迎えており、「以前はあまり自由にプログラミングできない仕様だったが、近年は私たちが自在にプログラミングを加えられるようになり、ユーザーの要望に応じて使い勝手を変えることが可能で、自由度が上がっている」とのこと。

そのロボットシステムを作ったのが、協働ロボット業界のパイオニアと言われるユニバーサルロボット社です。iCOM技研はユニバーサルロボット社とパートナーシップを結び、事業を拡大しています。

iCOM技研の協働ロボットは神戸高専機械工学科に貸し出されており、研究などに使われているそう。山口さんが「興味があれば、実際に触ってみてほしい」と言うと、学生たちは目を輝かせました。

ーー 中小企業で導入が広がる協働ロボット

協働ロボットへの理解をさらに深めるため、山口さんが次に紹介したのは、iCOM技研が販売している協働ロボットシステム「パレタイザー(荷物の積み付け)」「溶接」「研磨」の動画でした。
学生たちは、初めて目にする協働ロボットの動きに興味津々です。

大企業の工場などに導入されている産業用ロボットとは異なり、協働ロボットは人間と近い距離で一緒に作業ができ、大掛かりな安全柵を必要としないため、省スペースで設置できるのが特徴です。また、動作を覚え込ませるティーチングも直感的にでき、ロボットに不慣れな人でもプログラミングが簡単なことから、中小企業への普及が進んでいます。

大手メーカーと自社の協働ロボットシステムの大きな違いについて、山口さんは「ソフトウェアを作る段階でお客様の声を聞きながら必要な機能をどんどん追加し、使い勝手を良くしていける点にある」と明言。そして、「一番手間のかかるティーチングの作業をいかに簡易化できるか。これがロボット業界の課題であり、ソフトウェアの生かしどころになる」と言い、同社でも今、その実現に向けて取り組んでいるそうです。

ーー 協働ロボットへの市場の期待と将来性

産業界は大量生産・大量消費の時代が終わり、人間とロボットが協働することで、多様化する消費者のニーズに合わせた柔軟な対応と、最適な効率化を目指す時代へと移り変わっています。またそれは、協働ロボットにAIを組み合わせることで実現可能だと言われています。

AIによって協働ロボットが発展すると、職人技の再現やティーチングの効率化などが実現し、さらなる利便性の向上が考えられることから、業界内では産業用ロボットより協働ロボットへの期待が高まっています。

協働ロボットの世界市場を見てもその流れは明らかで、ここ数年右肩上がりの成長を継続中です。2023年に2000億円を超え、2032年には1兆円から3兆円に達すると予想されています。

「今後、産業界の発展に協働ロボットやAIはどんどん関わっていく。その中では、皆さんが勉強しているソフトウェアが一つの軸になるので、今の学びが将来的に生かされるかもしれない」

「これから大幅な成長が見込める協働ロボット市場に、今後皆さんも関わっていく可能性がある」

業界の第一線で活躍する山口さんが発するメッセージに、学生たちは大きく夢を膨らませたのではないでしょうか。

ーー 学生からの質問

講義の最後には、質疑応答が行われました。

「エンジニアを雇う立場として、求めるキャリアやスキルは?」という質問に対し、山口さんは、「大学での研究も含めた3年以上の実務経験を重視する。コアスキルとしては、何かしらのプログラミング言語を完璧に習得しておいてほしい」と答えました。
また、「どんな価値観や目的を持って仕事に取り組みたいかを自分の中で明確にしておくと、採用する側もその人を理解しやすい」とアドバイスしました。

ーー 講義を受けて〜学生たちの感想

特別講義を受けた学生たちからは、次のような感想が寄せられました。

「人と共存しながら近い距離で動く協働ロボットは新鮮だった。iCOM技研はお客さまの要望に合わせてソフトウェアを作っている点に惹かれた」

「将来はソフトウェア開発の仕事に就くことを目指していて、ロボット(ハードウェア)にはあまり関心がなかったが、iCOM技研ではソフトウェア開発も行っていると知り、興味の幅が広がった。全工程に一貫して携わることができるという業務スタイルも魅力的だった」

「会社を見学してみたい」という声も聞こえ、皆、良い刺激を受けたようです。

ーー 講義を通して、山口さんが感じたこと

「講義後に学生たちから多くの質問を受け、その熱量に驚いた」と興奮気味に話す山口さんに、講義を行った感想や学生たちへの思いなどを聞きました。

「当社の協働ロボット事業に関心を持ってもらえたようだが、まずは大企業への就職を目指す学生が多いと思う。次のキャリアステップを考える時に当社のことを思い出し、選択肢の一つに加えてもらえたら嬉しい」と、これから社会へ羽ばたく学生たちにエールを送ります。

また、エンジニアを目指す学生に対し、自身ができることは何かと問うと、「一つは、自分の歩みを伝えることで業界について知ってもらうこと。もう一つは、将来的に当社で働くことになった場合、その人らしい働き方を一緒に見つけて伴走することだと思う」と語ってくれました。

今後も若い人たちと接する機会を設け、日本のロボット業界を盛り上げていきたいという山口さん。その熱い思いは、特別講義を通して多くの学生たちに届いたことでしょう。

<iCOM技研株式会社>

設立 2003年
代表者 代表取締役 山口知彦
事業内容 協働ロボットシステム開発・教育、制御盤設計・製作・施工、板金加工(レーザー溶接、切断、曲げ)
所在地 
■本社/兵庫県小野市敷地町811番地1
■AI Robotics Labs(神戸支店)/兵庫県神戸市中央区栄町通2丁目4番13号 神栄ビル8階

URL https://www.icom-giken.com/

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