インタビュー

トップページ > インタビュー > 有人宇宙システム株式会社

有人宇宙システム株式会社

有人宇宙システム株式会社

神戸と宇宙の架け橋に
地の利を活かして新事業に挑戦

2020.07.06

有人宇宙システム株式会社名古屋事業所長/神戸事務所長土田 哲 氏

三宮~神戸(オフィス)

「ひとと宇宙を結ぶシステム・インテグレーター」として、1990年に創業した有人宇宙システム株式会社(JAMSS)。神戸での事業展開や今後の展望について、名古屋事業所長/神戸事務所長の土田 哲 氏に話を聞きました。

土田 哲 氏

「システムズエンジニアリング」ー 宇宙で培ったノウハウを民間へ活用

有人宇宙システム株式会社は創業以来30年にわたり、国際宇宙ステーションの開発や「きぼう」「こうのとり」の運用業務に携わっています。当社には、電気や通信、ロボティクスなど、さまざまな技術を持つスペシャリストたちが約200人在籍。JAXA筑波宇宙センターを拠点に、世界の宇宙飛行士や運用管制員の訓練、宇宙実験の実施、宇宙飛行士の健康管理や衣食住支援といった幅広いサポートを行い、24時間365日地上から見守り続けています。

また、当社はNASAでも活用されている訓練技術を民間企業へ提供しています。宇宙では高いコミュニケーション力や状況把握能力、意思決定能力などが必要不可欠で、宇宙飛行士や運用管制員は高度な教育訓練を行います。この訓練技術は他の職種でも応用ができます。例えば、高い技術力を要し、わずかなヒューマンエラーも許されない原子力発電所の仕事もその一つ。神⼾は医療・健康・福祉、IT、航空・宇宙、環境・エネルギーという成長産業が集結していますので、原⼦⼒プラントに関わっている会社様をはじめ、様々な業種で当社が貢献できる分野があると⾒込んでいます。

さらに、システム安全の独⽴検証やソリューションサービスも我々の得意分野。すべては宇宙の仕事で培った⻑年のノウハウをもとにしています。私はかつて、フライトディレクタという地上の責任者を務めていましたが、宇宙飛行士の安全を守りながら、宇宙ステーションを利用した様々なお客様のミッション(科学実験・医学実験等)を成功に導くことが私の任務でした。時には⼼電図の付け⽅を宇宙⾶⾏⼠に教えたり、植物実験の細かな指示を出すのも仕事。もちろん医療従事者でも生物科学者でもないので深いところまではわかりませんが、それぞれのミッションのポイントを把握し、地上にいる研究者とともに限られた条件で最大の成果を生み出すノウハウは身につけています。⽇頃からいろいろな分野にアンテナを張って仕事に取り組んでいると、異職種・異業種であっても、どこに課題があるのかを抽出し、問題点を発⾒・解決する能⼒が⾝につきます。つまり、その業界のことを知らなくても、我々はなんでもお⼿伝いすることができるんです。ということを、営業回りをしていてお客様にご説明すると、⼤抵「そんなわけないでしょ」とあきれられます(笑)。でも実際に、新幹線等の鉄道や自動車、航空機の業界でも我々の力は活かされています。

宇宙業界では、従来から「システムズエンジニアリング」というミッション要求を実現するための工学的方法論を駆使しています。
「システムズエンジニアリング」の効果として、
 ・顧客の欲しいものを明確にしてくれる
 ・エンジニアに成果物をつくる手順を示してくれる
 ・コストと納期と品質のバランスをとってくれる
という普遍的なものがあり、宇宙業界だけではなく、全ライフサイクルを視野に入れて製品・サービスの開発をせざるを得ない業種のみなさまには、是非ご理解とご活用をいただきたいです。簡単なレクチャーもご提供しております。

神戸に事務所を開設した3つの理由

当社は東京に本社を置き、茨城県つくば市と名古屋市に事務所を持っています。新たに神戸事務所を開設したのは2019年7月のこと。名古屋よりさらに西に進出していくならどこがいいかと考えた時に、迷わず神戸を選びました。その理由は3つあります。

1つは、私が大阪出身で、神戸市にはかねてより好印象を持っていたこと。関西圏でも特に神戸市は、独自色を打ち出しながらいろいろなことに取り組む力のある地方公共団体だと注目していました。
2つめは、神戸市のしっかりとしたサポート力です。「神戸市企業拠点補助制度」を活用できるのは大きなメリットでした。当社では、三宮にあるオフィスの賃料や雇用を補助してもらっています。話を進めていく中で、神戸市企業立地課の方々の真摯な姿勢にも共感しました。地元の人口減少に歯止めをかけようと、できるだけ新しい雇用をつくり、人を呼び込むことに積極的。当社の機能の一部を神戸に持ってくることで、結果として住民税を払う人が増えるとか、互いに良好な関係を築いていけたらと考えました。
3つめは、港町であるという点です。港があるところには造船業の大手などが集まっています。海洋船と宇宙船の製造には共通する技術があり、優れた技術者たちも多くいる。そういった企業や人たちとタッグを組み、事業の拡大を目指す当社としては、神戸はベストな地でした。

実際に働いてみると、神戸の人は新しいものが好きという予想が的中。新参者の私たちの話にも耳を傾けてくれるので、とても仕事がしやすいです。けれども、時には思うように仕事が運ばないこともあります。行き詰まった私がきまって行く場所といえばメリケンパーク。「神戸港移民船乗船記念碑」(希望の船出)という銅像を眺めて元気をもらい、「神戸で新しいことに挑戦する」と誓った初心を思い出しています。神戸市からいただいた「BE KOBE」のバッジも私の心の拠り所。いつも胸に着け、神戸に根を下ろす気持ちでがんばっています。

「神戸港移民船乗船記念碑」(希望の船出)

宇宙ケーキの製作や宇宙旅行事業を構想中

神戸で実現させたい事業はいくつかありますが、まずは私たちの生活に近いことをしてみたいなと。スイーツの街らしく、パティシエと宇宙ケーキをつくってみたいと思っています。
また将来、⼀般の⼈が宇宙旅⾏に⾏ける時代がきた時に、神⼾を⽞関⼝にするのも今後進めていきたい事業の⼀つ。この神戸で宇宙ロケットの打ち上げを⾏うのは安全上の問題もあり難しいですが、宇宙旅⾏の会社の拠点を神⼾に据えるなら現実味もあるでしょう。今、関西地区でも宇宙ロケット基地をつくるという話が持ち上がっていますし、神⼾のアクセスの良さを利⽤して、⼈を集めたり技術を提供したりするのは神⼾で我々が担い、実際の打ち上げは新たに建築される宇宙ロケット基地で⾏うというのも可能なんじゃないかと考えています。
個人的には神戸市がサポートしているさまざまなプロジェクトを勉強中で、「水素スマートシティ神戸構想」にも注目しています。宇宙では燃料電池を使うことが多いので、何か一緒にできないかと考えているところです。

神戸はトップマネジメントの拠点としても魅力的

今年に入り、コロナで世の中の価値観がガラリと変わってきています。これまでは多くの企業が東京に一極集中でしたが、リモートでどこでも仕事ができるとわかった今、土地や場所に縛られる必要がなくなりました。当社幹部からも神戸に移りたいという声が聞こえてきたり、西の拠点として神戸の機能をもっと充実させていこうという話が出たりしています。オフィスの賃料は東京ほど高くはないし、飛行機や新幹線にもすぐに乗れてアクセスは抜群。トップマネジメントの拠点としても申し分ないと思います。

私は神戸に住むようになってゴルフを始めたのですが、都心部の三宮からゴルフ場までも車であっという間の距離で驚きました。ゴルフが趣味という経営者の方にとって、これほど最適な地はありません。飲食店も多く、シニア世代が住みやすい街だと実感しています。

大好きな神戸が、これから我々の力でもっと盛り上がるよう、日々の仕事に励みたいと思います。

有人宇宙システム株式会社の方々と神戸市担当職員
有人宇宙システム株式会社

有人宇宙システム株式会社

設立 1990年
業務内容 1. ISS(国際宇宙ステーション)におけるJEM(日本実験棟「きぼう」)の運用・利用支援業務、2. 教育訓練、3. 安全開発保証、4. システム安全独立検証(ソフトウェア評価)、5. 衛星利用(地球観測衛星、通信衛星、測位衛星)、6. 民間による宇宙利用の促進
所在地
■本社/〒100-0004 東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル 8F
■つくば事務所/〒305-0047 茨城県つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センター
■名古屋事業所/〒456-0002 愛知県名古屋市熱田区金山町1-2-26 ヤガミ金山ビル 6階
■神戸事務所/〒650-0033 兵庫県神戸市中央区江戸町95 井門神戸ビル 10階

URL  https://www.jamss.co.jp/

インタビュー一覧を見る