インタビュー

トップページ > インタビュー > ためま株式会社

ためま株式会社

ためま株式会社

Urban Innovation JAPANを契機に事業拡大、
広島から神戸、全国へ。

2020.11.24

ためま株式会社代表取締役社長清水 義弘 氏

旧居留地(オフィス)

Urban Innovation KOBE (通称:UIK)の2018年、2019年事業に参加した「ためま株式会社」(清水義弘社長、本社・広島県中区)が2020年4月、神戸市に拠点を開設した。

イベントなど地域の身近な情報を掲載する住民発信型掲示板アプリを展開するスタートアップで、2018年に長田区総務部まちづくり課と行った実証実験「子育てイベント参加アプリの実証開発」が地域のハートをつかみ、事業を拡大する契機に。UIKから発展したUIJ(Urban Innovation JAPAN)の一つ、豊橋市の事業でも2020年9月に採択が決定。

「地域住民の欲しい情報が揃い、住民をつなげる希望のマップでありたい」

まっすぐな思いが、広島から神戸、そして全国へと、地域住民を巻き込みながら広がっている。

「ためまっぷ」とは?
今日、今からでも行ける身近なイベント情報を5秒でキャッチできる住民発信型掲示板アプリ。現時点以降に参加可能なイベントの表示とGPS地図連動の情報基盤によって、自分の行ける・行きたい範囲の情報を欲しい時に簡単に見つけることができる。
(参考:ためまっぷながた

2018年UIJに参加。「ためまっぷながた」が社の転機に

遡ること2年前。ためま社が、UIJの2018年上期のプロジェクトとして、長田区総務部まちづくり課との実証実験に参加したことが事の始まりだった。区内では子育てイベントがたくさんあるのに、その世代に情報が届いていないという課題に対し、チラシを掲載する自社のアプリを改良して自治体向けに提供し、母親らへの情報共有を目指した。

同社のアプリを用いた実証実験の結果、子育て支援イベントの参加者が1.5倍に増え、アプリ利用者の満足度98%に。UIJの成功事例の一つとなった。
実証実験時に818人だったユーザーは2020年8月末で8219人に、リピーターは350人から2557人まで増えた。

清水社長は、長田区との実証実験が、社にとっての大きな転機となったと振り返る。
「市民の困りごとを自治体が汲み取り、民間企業と協働して解決した事例。会社としての引き出しが増えた」。市民の視点がカタチになり、社としても成長した。

「ためまっぷのない地域に引っ越したくない」。

ユーザーのみなさんにとって、なくてはならないツールとなっていることが嬉しかったという。

「ためまっぷ」について語る清水社長

2019年UIJ ためまっぷ中央 商店街振興への挑戦

2019年上期には、2度目となるUIJに参加した。

子育て世代を商店街に呼び込みたいという課題に対し、福岡市のスタートアップ「BLUE STYLE社のリサイクル・中古子供服のお下がりサービス”Lynks”」と連携しながら、大安亭市場(中央区)と長田神社前商店街(長田区)で、子ども服交換イベントを開いた。ためまの役割は、ためまっぷを使った住民への周知だ。

長田区では、すでに定着していた「ためまっぷながた」で、大きな集客力を発揮した。中央区では、「ためまっぷ中央」を開設し、集客に貢献、実証実験後に本格導入された。
当初はイベント情報だけを掲載していたが、地域資源マップや、コロナ禍でテイクアウト、デリバリーができるお店マップを紹介するなど、最適なサービスへと試行錯誤している。

2020年 神戸支社設立 「市を挙げて応援してくれる」

神戸でのプロジェクトが契機となり、2020年4月には、神戸市への支社を開設した。

思い立ったのは、2019年春、ちょうど資金調達が進んでいる矢先。神戸市側から「(企業進出の)補助金がある」と打診を受けた。
同じ頃、久元喜造神戸市長がUIJの記者会見でためまっぷの話題に言及

清水社長が税理士に相談すると「これだけ応援してくれる市に行かなきゃ」、COOも「行った方がいいんじゃない」と背中を押してくれた。

加えて、家族も「いいよ」と。この瞬間、決意は固まった。

神戸市は、市外の企業が市内へオフィスを移転・新設する場合、様々な支援制度を有している
同社はその一つを活用。

制度は、常用雇用者5人以上のオフィスを移転・新設する場合、IT関連企業には賃料の2分の1を3年間補助する。従業員が市内へ転入する場合、フルタイム勤務者で一人あたり120万円の雇用加算もある。同社の神戸事務所では現時点では5人の採用はないものの、認定から3年以内に5人になった時点で活用できるのが、この支援制度の大きな特徴だ。
(参考:神戸市の本社・オフィス向け支援制度)

2020年 神戸移住 「受け入れてくれる感じが良かった」

神戸支店は、社長の清水さんと部下の2人で切り盛りしている。近く地元神戸で雇う営業職1人が加わる予定だ。
2018年にUIJの初活動の時に4人だった社員は、7人になった

社長の清水さん自ら神戸に移り住んだ理由は何だったのか。

UIJの参加のきっかけとなったコープこうべの事業関係者、UIJで携わった市職員、UIJ事務局であり、現在神戸支店を置く起業プラザひょうごを運営するコミュニティリンクら関係者たち。みんな熱意があり、人がよい。

「受け入れてくれる感じが良かった」

清水さんは、2歳、4歳、高校1年と、計3人の子どもと妻と移住。そして、神戸に移転後、赤ちゃんが生まれ、6人家族になった。イクパパとして子育てと仕事を両立。「パパ、それちゃうわ」。子どもが発するようになった関西弁が、仕事の原動力ともなっている。

2020年 全国展開へ

現在、神戸支店は、関西圏、東海地方の営業拠点となっており、全国展開への足がかりとなっている。UIJ以来、多くの自治体や企業がためま社に関心を寄せているという。

2020年には神戸支店開設のほか、全国展開で2つの大きな動きがあった。7月に宮城県富谷市に東北支店を開設し、地域課題解決のプロジェクトに参画。「まえばちゃん」こと和田菜水子さんも、住まいを現地に移した。

9月には、Urban Innovation Japanの豊橋市への採択も決定。子育て、商店街と続き、今度は多文化共生。東北から参加する和田さんは「外国人と私たちは肌の色、カルチャーはもちろん、それぞれが日々考えていることも変わっていく。そういった多様な人たちが違和感を感じながらも、ゆるくつながれる機会をつくりたい。」と意気込みを語る。

広報担当の和田さん

未来へ ためまっぷが当たり前にある社会へ

長田区との事業から1年半が経過した2020年春、新型コロナウイルスの拡大でリアルイベントが中止となる中、新たな使い方が生まれた。

グループを主宰する60代のシニアが、本来イベントの情報発信を行うページに「頑張って、いつか会いましょう」「会いたくて会いたくて震えています」などと応援メッセージを書き込んだ。普段顔を合わせていた若いお母さんたちがどうしてるかな、寂しくしてないかな、との気遣いから。

「あったかい地域だと再認識した。長田で活動できて良かった」

孤立ではなく、地域でつながって生きる。
清水さんの目指していた社会がそこにあった

2018年、神戸・長田でのプロジェクトが転機となり、ためまの活動、理念は少しずつ拡大している。

会社の未来を、どう描いているのだろうか。

清水社長は、次のように目標を定める。
2020年30団体、2023には150団体でサービスを展開し、国内で当たり前のアプリにする。そして、2030年には世界進出-

「夜な夜なの妄想は、地域の500メートル圏内で回覧難民がでないこと」と清水さん。
「誰もが孤立しない社会にしたい。やりたいのは、情報を通して人同士をつなぐこと。半径500メートル圏内で助け合える地域には未来があり、その小さな積み重ねが社会を良くしていく。」

ためまのサービスを通じて、地域の情報を届けなければならない人に着実に届ける。情報、人がつながることで、思いやりも広がっていく。

そんなモデルが、広島から神戸、そして全国、世界へと広がっていく

神戸市関係者との集合写真

<ためま株式会社>
設立: 2014年5月
代表取締役社長: 清水 義弘
事業内容:
スマートフォンのGPS機能を活用し、「今日、今からでも参加できるイベント情報を5秒で検索できる」サービスを提供
所在地:
広島事務所 広島県広島市中区本川町3-1-5 シーアイマンション2F Port.Inc内
神戸事務所 兵庫県神戸市中央区浪花町56 起業プラザひょうご内
東北事務所 宮城県富谷市富谷新町95番地 富谷市まちづくり産業交流プラザ TOMI+

インタビュー一覧を見る